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毒を以て毒を制すタイプの精神科医

夢を語る時の注意点と「真実に向かおうとする意志」

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自己啓発系の書籍で、「夢は語った方が良い」「夢は語らない方が良い」どちらの意見もみますが、今回は、夢を語ることの弊害・注意点について、現時点での考えをまとめてみます。

  

 

<目次>

 

 

夢を語ると、既に達成したかのような錯覚に陥る

 

伊藤アキヒロさんの気づき

苫米地式コーチングの伊藤アキヒロさんが、動画の中で以下のようなことを述べています。

 

 ゴールを誰かに言うことで、その時って物凄くエフィカシーが上がるんですよ。

ただ、それと同時に、コンフォートゾーンの外にあったゴールが、中に入って来ちゃってるんじゃないかな、って思うんです。

ある種、ゴールを達成しているという擬似的な感覚が、その時にボンッと一気に自分の中で湧き上がって来るんじゃないかな、という風に思うんですね。

ですので、誰かに言った瞬間に、もう自分はゴールを達成してしまっているんだという錯覚に陥る。

行動しているのにゴールに近づいている実感が沸かないのはなぜ? - YouTube

 

これを視聴していて、当時は「なるほど〜」くらいだったんですが、よくよく考えると、すごく重要なことを言っているのではないかと考えたのです。

 

ドリプラと鶴岡秀子氏

この「夢を語ることで達成した気分になる」と聞いて思い出すのが、ドリーム・プラン・プレゼンテーション(通称ドリプラ)です。この集まりの趣旨を Web サイトから抜粋します。

 

 事業の価値を説明するのではなく、その事業が社会に広まった時、どんなシーンが起こるのかを体験してもらうのがドリームプラン・プレゼンテーションです。
プレゼンターは10分間という限られた時間の中で、事業の価値、あきらめない理由を伝え、見ている人たちに大きな感動と共感を与えます。その結果、真の支援者を集めることができるようになるのです。

ドリプラとは | ドリームプラン・プレゼンテーション(ドリプラ)

 

そして、第1回ドリプラ世界大会で共感大賞を受賞したのが、「伝説のホテル」で有名な鶴岡秀子さんです。
その夢の詰まったプレゼンテーションは、今でも会社のWebサイトから視聴することができます(Flashを使いたくない方は、Youtubeチャンネルで分割して視聴もできます)。

 

legendhotels.jp

 

今日、バングラデシュに、77番目の伝説のホテルがオープンした」から始まるこのプレゼンテーションは、現状の思いっきり外側にゴールを置いたものでした。

では、その後の鶴岡氏の軌跡はどうだったのかと言うと……まとめサイトなどは無いのですが、Wikipedia に端的に記されています。

 

伝説のホテル事業[編集]

  • ホームページ上では2006年の起業当初は直営ホテルを2010年に開業予定と記されていた。その後何度か書き換えられ、2011年頃までは2012年開業予定とされていたが、2012年冬頃に開業予定は調整中と変更され、その後の更新はされていない。

  • 2012年4月にタラサ志摩ホテルの運営を受託するも、5か月後の2012年9月にオープンに至らぬまま撤退・契約破棄。(ずさんな計画であったため、オーナ会社が契約破棄)

鶴岡秀子 - Wikipedia

 

ホテル事業は破綻しているものの、「伝説のホテルを建設する」と言って資金を集めてしまったため、引っ込みがつかない状態になっているようです。

栗城史多

「冒険の共有」を謳った登山家の栗城史多氏も似たような側面があります。

簡単に言うと、「無酸素単独登山+動画配信による冒険の共有」を掲げていましたが、その実態は本人が主張する実績と乖離があったのではないか、と常に疑われていた方です。

いわゆる「ドリプラ系」の方と一緒に講演もよくされていました。

亡くなられたのを機に賛否両論が出ておりますので、詳しくは言及しませんが、 興味のある方は以下のまとめサイトを参照されるのがよろしいかと思われます。

 

www44.atwiki.jp

 

 

目標は高く、過程も楽しんで

 

夢を語ることで「達成したような気分になる(ゴール側の臨場感が高まる)」こと自体は決して悪いことではないような気がしますし、応援してくれる人が出てくるのも良いことでしょう。

問題は、夢を語ることで周囲からちやほやされ、まだ達成していないのに、自分には実績や功績があると勘違いしてしまうことのように思います。その結果、今の自分とのギャップがどんどん大きくなり、そのうち、嘘やごまかしで目標を達成したことにしようとし始めると、そこから転落が始まるのではないでしょうか。

上述したドリプラの例については、ぶっ飛んだ夢を非常識な方法で達成することが重視されていました。
例えば、鶴岡秀子さんは「ホテルで働いたこともない私が、ホテル経営者に」というのを売りにしていましたし、栗城史多さんは登山経験がそれほど豊富で無いにも関わらず最初から無酸素単独登頂にこだわっていました。
端的に言うと、過程へのリスペクトが足りなかったように思います。
夢が尊いなら、夢に至るまでの過程もまた尊いはずであり、そこを強引にスキップしようとすると巨神兵のような残念なことになりかねません。

夢を持ったり誰かに語ったりするのが必ずしも悪いことはないですが、その時は夢に向かおうとしている今の自分も含めて楽しむくらいのスタンスが良いかもしれませんね。

 

*** ***

 

最後に、ジョジョ5部の警官の名言で締めたいと思います。
真実に向かおうとする意志を忘れずに。
(画像はお借りしました)

 

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